プラスチックに代表される高分子(ポリマー)材料は、金属やセラミックスに並ぶ三大材料の一つです。有史以前より我々は木綿や麻などの天然高分子を用いてきましたが、20世紀に入ってからは石油を原料とした数多くの合成高分子を作り出してきました。身の回りを見ても、衣料、包装材料、土木建築材料などの日用品から、自動車、家電、コンピュータ、携帯電話などの工学機器、さらには体内に埋め込む医用材料に至るまで、高分子材料は生活に深く浸透しています。
高分子は基本となる分子(モノマー)が数多く繋がった巨大分子であり、他の材料とは比較できないほど多種多様な性質を示します。高い機能を有する高分子材料を作るためには、新たな分子を合成して繋げる、相互作用を明らかにして構造を制御する、最適な方法で用途に合う形状に成型するなど、化学や物理、数学などの知識に高分子特有の概念を合わせた理論と技術が必要になってきます。また、工業的な応用面だけでなく、高分子の性質はどうなっているのか、その性質は何に支配されているのかといった純粋な科学的側面からも大いに興味があるところです。
高分子の物性を研究する際は、高分子の構造を調べ、それと物性との関連を明らかにしていくのが基本です。ナノレベル(原子や分子の大きさ)、メゾレベル(結晶やアモルファス構造)、マクロレベル(高分子製造プロセス)の構造を研究することは、高分子材料が21世紀のテクノロジーを拓く手がかりとしても重要だと考えられます。